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トーマの心臓 Lost heart for Thoma (講談社ノベルス)トーマの心臓 Lost heart for Thoma (講談社ノベルス)
(2010/10/07)
森 博嗣

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 買っちゃいました♪ 本屋に行ってフラフラと店内を物色していたら、すかさず視界に飛び込んで来たこの本。抵抗する術なく、即座にレジへ。で、読んじゃいました♪
 以下、ノベルズ裏表紙よりあらすじ。

トーマと呼ばれた美しい下級生から、ユーリに届いた一通の手紙。それは、彼からの遺書だった──。
そこへトーマに生き写しの転校生・エーリクが現れ、オスカーは遺された想いに縛られた親友・ユーリを憂慮する。
揺れ動く心を捉える生と死、そして愛……。苦悩する少年たちを色鮮やかに描いた、萩尾望都の不朽の名作に、森博嗣が、今、新しい息吹を吹き込む。

 最近森博嗣デビューをした自分。作品読んでスゴイ作家サンだな~と思っていたので、この作品のノベライズ化は、まあ、大丈夫かな? と思っておりました。
 ただ、稀有な女性マンガ家が描く不朽の名作。繊細な少年同士の微妙な心理と愛と葛藤を、どこまで男性作家が表現できるのか、という不安も多々ありましたが。
 素直な読後感としては、まあまあ、良かったかな、と。オリジナルとはまた別の、森博嗣解釈「トーマの心臓」といったカンジでした。

 まず、ちょっと腑に落ちなかった点から。
 途中で気がついてあ然としてしまったんだけど、何故か舞台が「日本」なんだよね……それなのに、キャラのネーミングはそのまま「トーマ」とか「ユーリ」を使用。何でも教授がつけたあだ名という設定になっているのだけれど。ううむ、ちょっと違和感。オスカーだけはハーフ(クォーター?)設定なので納得ですが。

 で、時代設定も作中では明言されていないけど、おそらく大正~昭和初期あたりかと。「華族」とか「路面電車」とか「汽車」・「戦争」・「大陸」←中国大陸(多分満洲)などという単語が出没していたので。
 まあ、作品の世界自体にはそうそう影響していないと個人的には思われたので、どうってコトないんですが。でも、あえてこういう設定にする必然性があったのかな~と。そうしたからといって、その設定が充分活かされているとは思えなかったのが唯一残念なトコロ。

 が、全体としては完全なる森版・「トーマの心臓」といった具合に仕上がってました。やはり男性作家の手によるものなので、原作にあるようなBL要素はほとんどナシです。濃密な友情といった程度に薄められてますね。なので、必然的にユーリの苦悩や葛藤・トーマの死の謎・エーリクのユーリへの無償の愛情などがちょっと書き込み不足の感がありました。結構重要な要素なんですが。
 が、しかし!! その代わりと言っちゃなんですが、オスカーの心理描写がハンパなかったですね。なんたって彼の一人称でハナシが展開するので、彼の独り舞台といってもいいくらいです。

 彼の生い立ち・両親の過去・実の父親……等々、原作では見落とされがちなエピソードが巧く使われていて、なるほどなと。ユーリとエーリクの間に立つ彼の繊細な心理がいい具合に伝わってきますね。2人を見守り、助けていたつもりの自分が、実は逆に彼等に助けられていたとか。

 森氏の精緻で硬質な文体・的確な表現・さらりとした友情の描写等々、これはこれでまた完成度高い作品だと思います。何より、男性作家によって料理された「トーマの心臓」というだけでも興味深い。
 印象としてはそれほど悪くない。むしろもっと突っ込んでもらっても良かったかな~と思ってしまいましたね。 
 で、読了後、どうしても読みたくなってオリジナル版を再読。読み比べもまたオツなモノです。


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Theme : 今日の一冊 * Genre : 本・雑誌 * Category : 森博嗣
* Comment : (6) * Trackback : (0) |

またもやおじゃまします。 * by まいまい
惺さん、チャレンジャー!!
この本の存在は知っていたものの
どうしたものかと思っていたんです。
まだ森博嗣さんの本を読んだことないんですよね。

舞台が日本!?
キリスト教ぬきの「トーマの心臓」は
あり得ないと思いますが
どんなふうに料理したのか興味津々です。
その前に「すべてがFになる」を読んでからかな~。

Re: まいまい様☆ * by 惺
こんばんは~☆
自分も以前から気になっていたんですが…どうしても読みたくて手に取ってしまいました。

> 舞台が日本!?
> キリスト教ぬきの「トーマの心臓」は
> あり得ないと思いますが
……と思います。この作品いっさい宗教色無いんですヨ。
その分深みもあまり感じず。
けど、ラスト、ユーリはちゃ~んと神学校に行くんです。

> どんなふうに料理したのか興味津々です。
「あっさり」な味つけです。男子の爽やかな友情と成長譚といったカンジですね。
やはりオリジナルを超えず…かな?

> その前に「すべてがFになる」を読んでからかな~。
森博嗣がどんなに素晴らしい作家サンかわかります。←なんて、自分も初心者だからエラそうに言えないi-229
その方が「トーマ」を書いているということ自体スゴイのかな。
上質・上品な作風ですね!

* by ひいち
そうなのそうなの!
何で日本?うーん・・・って思う部分が多々ありましたねー(笑)
1冊にぎゅうぎゅうにまとめた感もちょっとありーの・・・でしたが、森さんが好きなので、
「ま。オッケー」ってまとめちゃいました(笑)

Σ( ̄□ ̄*) * by 道楽猫
ついに、ですか。
私はまだ怖くて手が出ません(汗)
森博嗣さんはむかぁしからの萩尾ファンなのでそんなにムチャな出来ではないと信じているのですが。

Re: ひいち様☆ * by 惺
こんばんはi-178
やっぱ「日本」は気になりましたよね~!
ラスト近く、「風呂敷に包んだ弁当」あたりで、おおおッ!!
とちょっと悶絶。
でも、自分的には好印象です。
爽やかな「トーマの心臓」といったカンジで。
森博嗣氏のあの、澄んだ文体(何て表現したらいいのッ?)がツボでした!

Re: 道楽猫様☆ * by 惺
こんばんはi-176
> ついに、ですか。
はい、ついに、です。フフフ!

> 私はまだ怖くて手が出ません(汗)
> 森博嗣さんはむかぁしからの萩尾ファンなのでそんなにムチャな出来ではないと信じているのですが。
あ、全然ムチャな出来ではないですよ~!
自分は森博嗣デビューしたばかりだし、まだそんなに思い入れもなかったので多分読めたんだと思いまふ。
なかなかよろしいんではないかと自分は思っているんですが。
読後感爽やかな少年達の成長物語でしたね~。

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