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![]() | 文月に不実の花咲く (1997/12) 仁川 高丸 商品詳細を見る |
装丁がなかなかオシャレです。作品内容も甘酸っぱい胸きゅんきゅんの青春モノ。読了後、年甲斐も無く何だか切なくなってしまってしまった自分です。
五月雨と淋しさと騒がしさと
水無月の道行の三日月の
文月に不実の花咲く の3編収録。以下拙いあらすじ。
15歳のヒロイン瞳は少し大人びていて冷めた少女。両親の不和で家庭に失望しまくっている。そんな瞳の前に現れた転校生良平(あきら)。背が低く、だぼだぼの詰襟を着た良平は転校初日からいきなり瞳に「好きだ」と告白し、慣れ慣れしくまとわりつく。辟易する瞳。なぜなら良平はオンナノコだったからだ……。
仁川高丸女史、ありきたりの青春ラブストーリー書くわけがない!「微熱狼少女」はビアンを、今回は軽いトランスジェンダーを扱ってます。
FTM気味の良平のラブラブアタックに最初は完全拒否だったけれど、良平の憎めないキャラクターとその悩みを知るにつれ、無意識の裡に惹かれていく瞳。彼女本人は最後まで頑なに自分の気持ちを認めない、認められない。けれど瞳のことを諦めかけた良平が他に彼女をつくってしまったと知った時、意外にも嫉妬を覚えたことをきっかけに、やっと自分の気持ちに気付いてしまう。けれど時既に遅し。良平はその彼女の許へ帰ってしまうのだ。足掛け4年に渡る2人の関係に終止符が打たれようとする、まさにその別れの夜。最初で最後の二人の身体的・精神的ふれあいの描写がなんとも切なく甘く悲しい。お互い気持は通じ合っているのに、瞳には「女同士」という抵抗が抜けきらないのか、どうしても上手くいかない。良平が彼女をつくったのも、瞳と付き合う時の練習のため。そんな良平のあまりにも打算的で不実で屈折していて、それでも痛いくらいの不器用で一途な想いに、瞳~素直になれよ~と思わず横やりを入れたくなってしまいます。
仁川高丸女史の作品は他に「キス」・「ソドムとゴモラの混浴」・「こまんたれぶー」を読了したけれど、この作品と「微熱狼~」が抜きん出ているかな。単に自分の好みかも知れないけれど。


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![]() | 微熱狼少女 (1992/02) 仁川 高丸 商品詳細を見る |
第15回すばる文学賞佳作受賞作。ビアン(女性同士の同性愛)小説です。
かれこれ20年近く前の作品ですが、当時としてはなんと画期的な受賞だったのでしょう! 審査員の方々の偏見の無い眼力に、この作品を世に出してくださったことに感謝です。
学校にも家にも居場所のないヒロイン、ウルフカットの藤乃。(狼といわれるゆえんのひとつはこの髪型のため)
父親が同性愛者であるがゆえ、周囲からエイズ持ちという、いわれない偏見のまなざしが容赦なく彼女に降りかかる。そんな孤独な藤乃に手を差し伸べる(手をつける?)のが、変わり者の非常勤教師、三島。
ビアンを公言している三島を否定しつつも、何故かその妖しい魅力に否が応でも惹かれてゆく心理描写が秀逸!
ノンケの藤乃をゆっくりゆっくり落としていく三島センセイはなんてテクニシャン! そして傷つき、手負いとなった迷える狼を救うことが出来たのも、これまたひょうひょうとした三島センセイなのでした。
今でいうツンデレキャラの藤乃の、三島にどうしようもなく惹かれてゆく心の変化がなんとも可愛らしい。
ちょっぴりオトナの青春学園モノ? といったところでしょうか。う~ん、自分の語彙力、表現力の無さに泣きたくなりますが。
最後に二人がめでたく結ばれる場面はかな~りハードでエ○いですが、巧みな描写で一気に読ませます!
2人の行く末にやきもきしながらも、マイノリティ同士の思わぬハッピーエンドに安堵。
仁川高丸サンの本、希少価値です。図書館でお目にかかるくらいかな。ハマって読みあさりましたが、コレとあともう1作品が自分にはベストですかね。
