FC2ブログ
06≪ 2021/07 ≫08
12345678910111213141516171819202122232425262728293031
個別記事の管理2010-12-04 (Sat)

ご訪問ありがとうございます☆

珍妃の井戸 (講談社文庫)珍妃の井戸 (講談社文庫)
(2005/04/15)
浅田 次郎

商品詳細を見る

 「中原の虹」にしようか「珍妃の井戸」にしようか迷いましたが、「蒼穹の昴」の次作はコチラらしいので、チョイス。読了後の印象、良く出来たサイドストーリー、またはリンク作品といった趣でした。以下文庫裏表紙よりあらすじ。

列強諸国に蹂躙され荒廃した清朝最末期の北京。
その混乱のさなか、紫禁城の奥深くでひとりの妃が無残に命を奪われた。皇帝の寵愛を一身に受けた美しい妃は、何故、誰に殺されたのか?
犯人探しに乗り出した日英独露の高官が知った、あまりにも切ない真実とは──。

 スケール的には「蒼穹の昴」には及ばないけれど、多視点から語られる趣向を凝らした構成・さりげにミステリー仕立ての展開に、序盤から否が応でも引き込まれてしまった。
 華麗に登場し、幕を引く狂言回しのミセス・チャンが秀逸! 

 幽閉された光緒帝の寵愛を受けた珍妃を殺したのは一体誰か? 
 このスキャンダルを逆手にとって中国での利権を手にしようとする、イギリス・ドイツ・ロシア・日本の高官たちが、あたかも探偵役となってその真犯人を追いつめる。
 史実では西太后の仕業であることが周知の事実だけれど、今作においては冒頭からその説は否定。真の犯人は他にいると信じて、新聞記者・元宦官・袁世凱・珍妃の姉、瑾妃・珍妃付きの大監・廃太子・光緒帝と、さまざまな地位にある7人から事情聴取し、珍妃殺害の真実に迫ってゆく。
が、事は簡単に進まず。芥川龍之介の「藪の中」のごとく各人の話はことごとく異なり、混乱する高官達。

 それと同時進行で光緒帝と珍妃の固い絆と、加えて末期的な清朝の情勢を浮き彫りにさせてゆくあたり、巧いな~としきりに感心。
 第一章で謎かけをし、第二章で新聞記者に清朝の現状を語らせて、読者にさりげなく歴史の理解を促す。そして第三章以下、様々な推論を投げかけて読者を翻弄し、独自の小説世界に引き込んでしまう。披露される幾通りもの珍妃殺害エピソードは、すなわち作者の優れた独自の歴史的見解の成せる技かと。

 誰が珍妃を殺したのか? 謎がいっこうに解けぬまま、遂に光緒帝にまで行きついた4人。彼の口から語られる恐るべき真実と真犯人。

 義和団の乱とそれを鎮圧するために介入した八カ国連合軍の暴挙。それがこの小説の重要な背景となっている。
 珍妃を中国に、そして探偵役と思しきイギリス・ドイツ・ロシア・日本の高官達をそれぞれの国に擬人化した作者の卓越した歴史観と配役の妙にひたすら脱帽!
 ストーリーとしてはそこそこ楽しめるといった程度だと。けれど、従来の歴史の定説を覆し、独自の見解を提示してそれを見事に小説世界に融合させている浅田次郎の職人芸を堪能させていただきました!


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
blogram投票ボタン
関連記事
Theme : 歴史・時代小説 * Genre : 本・雑誌 * Category : 浅田次郎
* Comment : (0) * Trackback : (0) |
コメント







管理者にだけ表示を許可する