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個別記事の管理2011-06-20 (Mon)

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裏庭 (新潮文庫)裏庭 (新潮文庫)
(2000/12)
梨木 香歩

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 最近よく読む梨木香歩。たまたま図書館にあったこの本をすかさず借りた! 今のところ自分にとってハズレ無しの面白さ。スミマセン、やたら長いです、ご注意!! 以下BOOKデータベースより内容。

昔、英国人一家の別荘だった、今では荒れ放題の洋館。高い塀で囲まれた洋館の庭は、近所の子供たちにとって絶好の遊び場だ。その庭に、苦すぎる想い出があり、塀の穴をくぐらなくなって久しい少女、照美は、ある出来事がきっかけとなって、洋館の秘密の「裏庭」へと入りこみ、声を聞いた―教えよう、君に、と。
少女の孤独な魂は、こうして冒険の旅に出た。少女自身に出会う旅に。

 最初は少女が大活躍する冒険ファンタジーものかと思ってました。が、読み進めていくうちに、あ、なんか違うと思い始めて。今まで読了した梨木作品とは雲泥の差のページ数。一人の少女の物語としてはかなり重厚でシビアな作品でした。
 
 主人公の少女は照美。両親共働きで忙しく彼女をなかなか構ってくれない。ほとんど「団らん」というものに縁遠い家族。そんな照美の唯一の救いが友達の祖父・丈二。
 その彼から聞かされる町内でも有名なバーンズ家の廃れた洋館の裏庭の思い出話。当の照美もかつて今は亡き知的障害の双子の弟・純とともに遊びに行ったりした馴染みの裏庭。
 そこで照美はある日とても不思議な体験をする──。

 後の展開は梨木香歩お得意の異世界への旅となるわけですが。その転換が毎回素晴らしい。今回は洋館内にある不思議な大鏡が異界への入り口。そして不思議の国のアリスの白ウサギのごとく、謎の少女を追いかけて現実世界の「照美」は、「テルミィ」となって異界へと足を踏み入れる。
 そのテルミィが迷い込んだ異界はなんと崩壊寸前。それを阻止するためにはバラバラになった竜の骨を元に戻さなければならない。旅の途中で出逢う様々な人物達。その過程の描写はとてもとても楽しいものではなく、逆に重く沈痛。
 テルミィは常に自分は一体どうしたら良いのか、誰ともなしに質問を投げかける。それは自分に対する自信の無さの表れ。迷い、傷つき、唯一の旅のナビゲーターを殺めながらも竜の骨を探し求める。その辛いシビアな旅で次第に理解する自分という存在。

 はっきり言ってちょっと読み進めるのが辛い部分もありました。ファンタジーとしては起伏が少なく盛り上がりに欠ける印象も否めない。けれど、この作品はエンタメではなく、あくまで照美という少女の内面の成長の旅を描いたものなのだと。
 彼女の暗く鬱屈した心情そのものが「裏庭」であり、そこは「死」とも直結している。照美はかつて双子の弟・純が自分のせいで命を落としたと思いこみ、今だに自責の念に縛られている。けれど、「裏庭」を通じて彷徨いこんだ異界でその弟に出逢い、彼の安らかな死後を知ることによってようやく救われる。
 そして、今までぎこちなかった母親との関係を別の視点で捉えることができるようになる。母親も実は一人の人間であるのだと。自分と母親は別個の存在であるのだと。異界からの旅を終えて、現実へ戻ってきた照美の成長に思わず瞠目。

「私は、もう、だれの役にも立たなくていいんだ」

 と、理解するに至った照美の心理描写が秀逸です。子供は両親に気に入られようと必死に自分を抑圧する傾向がある。それが今まで照美をがんじがらめにしていたけれど、その抑圧を打破し家族と正面から向き合えるようになった照美の精神的成長が素晴らしい。
 「生」と「死」が混じり合う現実と異界とをうまくリンクさせている構成も抜群の巧さ。照美と母親と祖母。3代にわたる血縁の不思議もちょっとしたミステリー仕立てで描かれています。

 ボロボロ泣ける感動作というわけではないですが、ずっしりと胸に迫る重厚な少女の成長譚・家族の絆の物語として読める。さらに、子供時代のノスタルジーをハンパなく感じさせてくれるという、多彩な表情を持つ1作でした。


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Theme : 今日の一冊 * Genre : 本・雑誌 * Category : 梨木香歩
* Comment : (4) * Trackback : (0) |

鏡の国のテルミィ * by nao
英国風香歩庭園・・魅力ある世界でした。
有名児童文学作品の世界がいくつも浮かび上がってきて、
物語の世界とともに、その作風についてもノスタルジーを感じさせるものでした。
(最近読んだばかりなので、まだ読後感は鮮明でありますよ)。
主人公の少女の成長物語が物語の根幹ながら、
この物語の重層的な構成が生きる部分・・
終わり近く、主人公の母親(さっちゃん)が大鏡に映る自分の姿に、
母と娘の姿を同時に見出すところなどにも、感心しました。
それにしても、様々な人々の物語が交錯・凝縮していて、満腹感ありましたなぁ。

Re: nao 様☆ * by 惺
こんばんは!
リコメ遅くなって申し訳ありません(>_<)
「鏡の国のテルミィ」…さすがですね!! まさにソレ☆

> 英国風香歩庭園・・魅力ある世界でした。
家守綺譚と対極ですね! あっちは純和風?

> 有名児童文学作品の世界がいくつも浮かび上がってきて、
> 物語の世界とともに、その作風についてもノスタルジーを感じさせるものでした。
自分は勉強不足でまったく思い浮かばなかった…ダメですね。
さすが、naoサン!

> 終わり近く、主人公の母親(さっちゃん)が大鏡に映る自分の姿に、
> 母と娘の姿を同時に見出すところなどにも、感心しました。
巧い描写でしたよね!
絵本で「マジョモリ」というのがあるのですが、そちらの作品をふと思い出してしまいました。
やはり幼少の母(今作では祖母だけど)と娘が同時系列に存在する
という作品なんですけどね。

> それにしても、様々な人々の物語が交錯・凝縮していて、満腹感ありましたなぁ。
そうですね。児童文学に分類されているけれど、
オトナが読んでも充分に鑑賞できる作品ですよね。

ハナさんのお茶会(ティーパーティ) * by nao
先に言及されてあった絵本の「マジョモリ」・・今日、頁を開いてみました。
つばきのママ・ふたばさんの言葉「私もご招待されたーい」・・
これには驚きました・・娘を見守る母親という従来の役どころ(?)を離れ、
少女に還っていってしまいましたかぁ・・意外な展開、その微笑ましさ。
また早川司寿乃さんの精緻な線描・淡い繊細な色調、適確でありました。

ゆにーくな、えほんであること、あきらかなり

Re: nao 様☆ * by 惺
こんばんは!
> 先に言及されてあった絵本の「マジョモリ」・・今日、頁を開いてみました。
スゴイ!! 早いですね!

> つばきのママ・ふたばさんの言葉「私もご招待されたーい」・・
> これには驚きました・・娘を見守る母親という従来の役どころ(?)を離れ、
> 少女に還っていってしまいましたかぁ・・意外な展開、その微笑ましさ。
え? こうくる? 的な自分にとって度肝抜く展開でした。

> また早川司寿乃さんの精緻な線描・淡い繊細な色調、適確でありました。
見事にマッチしてましたよね。
ものすごくゴージャスな絵本だと思ってます。
梨木サンは児童文学にも一般文芸にもどちらにも素晴らしい手腕を
発揮されるのでホント実力のある作家サンなんだなあ、と感慨しきりです。

> ゆにーくな、えほんであること、あきらかなり
まさにその通りかと。
オトナも楽しめる稀有な絵本ですよね!!

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