FC2ブログ
07≪ 2021/08 ≫09
12345678910111213141516171819202122232425262728293031
個別記事の管理2010-03-25 (Thu)

ご訪問ありがとうございます☆

男装の麗人・川島芳子伝 (文春文庫)男装の麗人・川島芳子伝 (文春文庫)
(1988/05)
上坂 冬子

商品詳細を見る


 きっと名前だけなら誰でも一度は聞いたことがあると思います。軍服に身を包み、ヅカ(宝塚)ばりの男装で戦中に活躍したハデな人物。自分はそんなイメージしかなくて、ただ単に面白そうと興味本位でこの本を手にしました。が、読了してみて彼女に対するそれまでのイメージが180度変わりました。あまりにもあわれすぎて。

 日本名川島芳子。中国名金璧輝。そして(満洲族としての)本名愛新覚羅顕㺭。3つの名前を持つ彼女はれっきとした清王朝粛親王家の第14王女。
 大人同士の勝手な取り決めで、幼少時に日本に渡り日本人として過ごすこととなり、己の意思とは遠いところで持たされた3つの名前に3つのアイデンティティー。はたして一体どれが本当の彼女なのか? それは言わずもがな。常に彼女の潜在意識の裡には「自分は由緒正しい清朝の王女」というプライドがあったという。
 辛亥革命によって清王朝は崩壊し、まがりなりにも王族のひとりであった彼女は成長後、内心忸怩たる思いがあったに違いない。つのる清王朝復活(復辟)の強烈な願望ゆえに日本の軍部に利用され、満州国建国の動乱の只中へと飛び込むことになってしまう。

 著者上坂冬子さんの芳子の実兄への粘り強い接触依頼や現地満洲への取材等々、まるでとり憑かれたようなエネルギッシュさ。芳子に対するひとかたならぬ想いが、読み進めるにつれ行間からアツく伝わってきます。今まで単なる偶像でしかなかった川島芳子の実像に、初めてひとりの人間として迫った貴重な資料なのではないかと思う。事実、満州国や溥儀に関する書籍を読むと大抵参考文献としてこの作品が挙げられているし。

 川島芳子は実の両親とは10代で死別。日本での義理の両親とも様々な葛藤があったらしく、家庭環境は複雑そのもの。初恋にも敗れ、結婚にも失敗(結婚してたのね~一時的にしろ)し、自分を理解してくれる人物は皆無。追いつめられた彼女は必然的に? 日本軍の手に堕ち、いいように踊らされていく。当時としてはかなり奇異な男装は、実は脆いその身とココロを護る唯一の強固な鎧だったのではないかなと、あわれに思うことしきり。

 終戦後は中国国民党に逮捕され、よく比較される山口芳子=李香蘭は同じく裁判にかかっても、日本の国籍を所有していたという理由で助かったけれど、川島芳子は日本人の養女であったのに、実は養父は籍を入れてなかったという……ゆえに中国人でありながら日本に協力したという罪を課せられ、処刑されてしまう末路に行き場のない憤りを、理不尽さを感じざるを得ない。

 日本と中国の間で揺れ、その狭間の満州国で踊らされ、1948年3月25日、ちょうど62年前の今日、無残に銃弾で散って逝った彼女の辞世の句にまたも涙腺がヤバいです。

家あれども帰り得ず
涙あれども語り得ず
法あれども正しきを得ず
冤あれども誰にか訴へん



にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

blogram投票ボタン
関連記事
Theme : 考えさせられる本 * Genre : 本・雑誌 * Category : ★川島芳子関連
* Comment : (4) * Trackback : (0) |

* by キヨハラ
この記事を読んで、うん、この著者は読まなくちゃって思いました。
男装の麗人→(気になる)NHKの歴史ヒストリア→(さらに気になる)となっていた今日この頃、この記事に会ったのは、神様の思し召しと感じました。
実は誰かが替え玉になり、その後の余生をどこぞで送ったという節がありますね。この著書だと、その辺は、どのようになっているのでしょうか。

Re: タイトルなし * by 惺
>キヨハラ様

語らせますか? この自分に川島芳子を。きっと朝まで延々続くと思われますよ~。
上坂さんはもうお亡くなりになっているのですが、かなり著名なジャーナリストだったそうです。著作も多数おありのようで。この方の書籍が一番信頼できるかと。興味がおありなら一読される価値はあります。

替玉説も確か記載されていたと思います。ただ、芳子の実妹がその説を完全否定していたという証言を載せていたかと。実はその新聞記事を自分は持っているのですが(怪しいフリークさ!)やはり本人かどうかはグレーゾーンらしいですね。

他にも「清朝第十四王女──川島芳子の生涯」… 林えり子著 ウェッジ文庫刊
「満洲 交錯する歴史」… 玉野井麻利子著 藤原書店刊
にも詳しく彼女に関する記述があります……って、ああ、お願いだから思いっきり引かないでくださいっ! 
川島芳子オタクな自分なのでした。でも、彼女、性格はかなり破壊されていたらしいです。

* by キヨハラ
解説ありがとうございました。
いつか読んでみるようにします。
惺さんは、どうやら破壊されている人が嫌いじゃないようですね?もし見当はずれだったら、ごめんなさい。

Re: タイトルなし * by 惺
> キヨハラ様

す、鋭いですね……。実際にお付き合いするとなると遠慮させて頂きたいと思いますが、書籍上の人物であれば、逆に何故か愛着を感じてしまいます。きっと自分が限りなくそちらの方向に近いからだと……e-263

あ、後に挙げた2冊は右から左に受け流して下さりませ~。
コメントありがとうございました!

コメント







管理者にだけ表示を許可する