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![]() | 蝶 (文春文庫) (2008/12/04) 皆川 博子 商品詳細を見る |
名作揃いの短篇集という噂を聞いて図書館で借りました。ジャケ画がとても綺麗です。以下BOOKデータベースより内容。
インパール戦線から帰還した男は、銃で妻と情夫を撃ち、出所後、小豆相場で成功。北の果ての海に程近い「司祭館」に住みつく。ある日、そこに映画のロケ隊がやってきて…戦後の長い虚無を生きる男を描く表題作ほか、現代最高の幻視者が、詩句から触発された全八篇。夢幻へ、狂気へと誘われる戦慄の短篇集。
空の色さえ
蝶
艀
想ひ出すなよ
妙に清らの
龍騎兵は近づけり
幻燈
遺し文
独特です。圧倒的な世界観に幻惑されっぱなしです。
8篇の短篇はすべて日本が舞台となっているのですが、なぜだろう、この作者が描くとどうしても異国の雰囲気が醸し出されている気がする。時代設定が戦時中~戦後という尋常ではない特異な時空のせいだからなのか?
今作の特徴はそれぞれの短篇がすべて名詩句より引用、あるいはモチーフとなっているところ。
上田敏・西條八十・ハイネ等々。それらの詩句が効果的に作用していて、独特な雰囲気をさらに奥深いものにしているかと。
すぐに読めてしまう作品群なのに、とても濃密内容。どの作品にも「死」がすぐ隣り合わせにあり、それが日常に何の変哲もなく溶け込んでいるというのが恐ろしくもある。
何のわだかまりもなく半身だけが「そちら」の世界へ行ってしまう少女、夫の眼球の無い眼窩に花を生ける妻の幻想的な狂気、夫人とそれに仕える女中との背徳的な絆、戦争の犠牲になった女性と少年との魂の交感──一筋縄では読みとれない、ある種の官能的で濃厚な世界が繰り広げられてゆく。
残酷でありながら幻想的。濃厚でありながら清冽な印象を受ける作品の数々。
どちらかというと大人の短篇集。サクッと読めてしまうけれど、あえてじっくり時間をかけて作者の創りあげた小説世界を堪能すべきかなと。



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